坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

Webサービス作りたいマン(前編)

その昔、個人的な趣味でWebサービスを作って世間に公開するのが流行った時期があった。
phaさんのホッテントリメーカーとか、他にも色んな人が色んなサービスを楽しみながら作ったり、できあがったもので遊んだりしていた。
僕も当時その流れに乗って、何か面白いものを作ってみたいなと漠然と考えるようになっていた。
最初は、mixiのようなSNS風のサービスを作って、たくさんのユーザーを集めて流行らせて…とか、大きな野望を抱いていたのだが、さすがにそれは作るのも拡散させるのも難しいということにすぐ気づく。
そこで、次に考えたのが、ネットから面白そうな情報を自動で拾い集めてきて、それらを整理した形で表示してくれるタイプのサービスだった。その程度の規模であれば、わりとさくっと作れそうだし、作ったものが面白ければすぐに口コミで人が集まってきてくれそうだなという読みがあったのだ。

 


そんなことを考えていたある日、たまたま友達とカラオケに行くことがあり、そこで面白いカラオケ機能を目にすることになる。
ユーザーが年代を指定すると、その年代に流行った曲の一覧が表示されて、その中からカラオケをリクエストできるというものだ。
「1990年」と指定すると、「愛は勝つ」とか「今すぐKissMe」とかの曲がずらっと画面に出てくるようになっていて、学生時代に流行った懐かしい曲に再会できて、それだけでノスタルジーにひたることができたのだ。
その時にふと、この仕組みをYouTubeにあがっている懐メロ動画で実装したら、面白いものができるのではないかとひらめいた。
パソコンから年代を指定することで、それに応じた懐メロ動画がずらっと一覧表示されるシステムを、Webサービスとして作ってみたい。
そう思い始めた時には、もう手が動きだしていた。

 


このWebサービスを作っている時は楽しかった。
普段は、仕事で堅苦しい金融系業務アプリをメンテナンスしている自分にとって、自由に自己表現できる世界だったし、最高の息抜きタイムだったのだ。
さらに仕事での僕は、COBOLやJCLなどの大昔からある枯れた技術体系の中で泥臭いことをやっていたので、最新のWeb技術に触れることはとてもとても新鮮で、興味深いことの連続だった。

 


根本的な仕組みの部分はすぐに完成して、あとはデザイン周りを調整している時に、なにか物足りないなと思い、Amazonから懐メロ動画に関連した広告を取得して表示させるようにした。他にもなにかできないかなと思案して、今度はWikipediaからアーティスト情報を取得して、一緒に表示させるようにしてみた。
こんな感じで、Web上に散らばっている様々な情報を、うまく組み合わせて一つの形にして提供する手法のことを、当時は「マッシュアップ」と呼んでいた。

 


まもなくそのWebサービスは完成し、当時やっていた自分のブログでリリース連絡を出し、あとは特に宣伝らしいことは何もしなかった。
でも、たまたま目に触れた人たちの間で徐々に口コミで広まり始めているのを感じていた。
このサービスは、一定の年齢層からは強く支持されるだろうなと予想していたのだが、ずばりその通りになっていった
しばらくして、ある日を境に爆発的にアクセスが増えたことがあって、原因を調べてみると、このサービスが、とある技術系の雑誌にWebアプリケーションのサンプルとして取り上げられているということがわかり、とても驚いた。
今までWebアプリなど作った経験のない自分が、見よう見まねで色々やってきて、今度はそれがWebアプリのサンプルとして取り上げられるまでになったということが、驚いたし、なんだかとてもうれしかった。

 


ほどなくその雑誌から、僕のWebサービスの開発記録を連載記事の形で書いてもらえないかというオファーがきた。

 

懐メロ動画のキュレーションサイトという、わりかしどんな人でも興味を持ちそうな内容であること。
YouTubeAmazonWikipediaという、当時メジャーだったサービスをマッシュアップしているという、わかりやすさ。
それらを、Webエンジニアではなく、時代遅れといわれるメインフレームのエンジニアが独学でWebの技術を学びながら作り上げたという点。

 

メディアで取り上げるには好条件がそろっていると、その雑誌の編集者から言われた。
そうは言うものの、自分みたいなWebの世界では素人同然の人間が、そんな偉そうに記事など書いてもよいのだろうかと不安を口にすると、その編集者はだいたい次のようなことを言った。

 

「すごい人がすごいプロダクトを産み出すのは当たり前で、それではなにも面白くない。
普通の人が技術の力を借りることで、いとも簡単に大勢の興味をひくものを作り出すことができるという事実。これを世の中に広めたい。」

 

なるほど、と思った。
そして、ぜひ書いてみたいと思った。
自分がメディアで表現することで、なにか少しでも世の中に影響を与えることができるとしたら、やってみたい。そう思っていた。

 


後編につづく

sakamoto2.hateblo.jp