坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

Webサービス作りたいマン(後編)

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なんとなくで適当に作って公開していただけのWebサービスだったのだが、その開発記録を某技術雑誌で連載することになってしまい、意外な展開になってきたことに自分でも驚きを感じていた。
原稿を書き始める前に、まず担当編集者から「人に読ませる文章の書き方」についてざっくりと説明を受け、あとは好きなように書きたいことを時系列に並べてどんどん書いていった。もともと文章を書くのは好きだったので、途中でつまづいたりすることもなく、すんなりと三ヶ月分の連載記事を書き上げることができた。
目指したのは、「エンジニアですらない普通の人でも気軽にWebサービスを開発・公開できる時代が近づいている」ということを、読者に啓蒙することだった。
これについては、連載終了後の読者アンケートを見せてもらった時に、「勇気をもらった」「自分も何かを作ってみたくなった」的な反響が多く、ほぼ達成できたのではないかと思い、非常に満足していた。

 

 

雑誌での連載が終了して、その達成感からしばらくはぼーっとしていたが、そのうち元気がでてきて、なにかまた新しいWebサービスを作ってみたくなってきた。
その頃、自宅の近所にある図書館をよく利用していたのだが、そこの蔵書検索サービスが非常に使いづらいといつも感じていて、これ自分でなんとかできないものかと思っていた。いっそのこと自分で自分専用の蔵書検索サイトを勝手に作ってみたら面白いのでは?と思い、さっそく手を動かし始めた。
オリジナルの蔵書検索サイトから書籍データを何千件か取得してきて、それを自分の用意したデータベースに放り込み、そこから独自のユーザーインターフェースで検索できるようなWebサービスを作り上げた。
このサービス、正直に言うとあまり出来はよくなかったし、使ってくれるユーザーも非常に限られているので、アクセス的にはほとんどヒットはしなかった。

 

 

ちょうどその頃、僕が連載をやった雑誌の出版社から、こんど技術イベントを開催するので遊びにきてみないか?と声をかけてもらった。
Winnyを作った金子さん(故人)や、モバゲーをほぼ一人で作ったエンジニアの方が公演されるということで、とても興味を惹かれた僕は東京まで遊びにいくことにした。
そのイベントでは、閲覧者の中からライトニングトークの参加者を募集していたので、せっかくなので僕も前に出てプレゼン的なことをやらせてもらうことになった。
そのライトニングトークでネタにしたのが、例の図書館の蔵書検索サービスだ。人前で話をするのは苦手だったが、頑張って5分間のトークをやりきった。
その後でひらかれた飲み会で、僕のライトニングトークを見ていた人たちから色々と話しかけられ、それがきっかけで知り合いが何人かできた。
目のつけどころが独創的で面白いなどと言われ、おおむね評判がよかったので、頑張ってプレゼンしてよかったなと思うと同時に、自分の中で世界が広がりつつあるのを感じていた。

 

 

それから後も、僕はいろいろなWebサービスを作り続けた。
ツイッターをスキャンして、現在公開中の映画に関する評判を抽出して、ランキング表示するサイト。
クックパッドのレシピから、はてなブックマーク数が多いものを検索表示できるサイト。
他にも色々と自分でアイデアを出しては、試行錯誤しながら作り続けた。
最後まで完成せずに途中で頓挫したものもある。
なんとかできあがったものをリリースしても、たいしてヒットすることもなく埋もれていったものも多い。

 

 

そんなこんな色々とやっている内に、また例の雑誌で新たに連載をやらしてもらえたらいいかなと考えていた。
そうやって趣味の世界で、普段から思いついたアイデアを形にし続けて、その過程を記録してメディアで公開し、いずれは本という形で出版できたら最高だなと思っていた。
そうすることで自分が有名になって、周りからすごい人だと思われてとか、そういった名誉欲からきている訳ではなく、ただ単に、純粋にプログラミングに興味を持つ人を増やし、もっともっと面白いものが出てくる世の中にしていきたいという気持ちが強かった。
大げさかもしれないが、それが、僕がこの世の中に残せる唯一のものなのかもしれないと、当時は思い込んでいた。

 

 

そんなことをしていたのが、もう7、8年前のことだ。
残念ながら、今の僕はそういう活動は全く行っていない。
なんというか、僕はもう人が変わってしまったのだ。
世俗にまみれた僕は、わかりやすくいえば金儲け主義に毒されてしまっているような気がする。 世の中がどうとか、そんなことはどうだっていい。金こそ全て。 儲かればなんでもいい。どんな汚いことでもする。それこそ人を欺いてでも。
歳をとるということは、そういうことなのかもしれない。とても残酷な現実だ。

 

 

ただ、時々思い出す。
あの頃の僕は、とてもピュアで、崇高なことを考えていたな、と。
ああいう自分がいたんだな、輝いていたんだな、ということだけは、いつまでも忘れずにいたい。せめてそう思う。
僕の心の中にいる、Webサービス作りたいマンは、今でもすごい存在感をはなっているのだ。