坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

禍々しいものに惹かれてしまう

セルビアン・フィルム』とか『マーターズ』とか『ムカデ人間』とか、そういう禍々しい雰囲気につつまれた映画が好きだ。

 

 

僕は子供の頃からホラー映画が好きで、人が残酷なかたちで殺されたりする場面が続くような映画を、よくたて続けに観ては喜んでいた。
昔のホラー映画は、「13日の金曜日」とか「悪魔のいけにえ」とか、非常にわかりやすくパターン化されたものが多かったように感じるが、歳をとるにつれて、どんどんストーリーは不条理なものになり、残虐描写はさらに過激化しているように感じる。
観る側も、「なるほどこんどはそうきたかー」と感心しながら、さらに刺激の強い、過激で陰惨な映像を求めるようになってしまう。
そういうことを誰かに話すと、必ず眉をひそめられてしまうのだが、こういった残虐描写のきつい、誰が観ても目を背けたくなるような映像に対して、どうして自分がこんなにも惹きつけられてしまうのだろうか。

 

 

例えば、『セルビアン・フィルム』には、劇場公開時に規制が入りカットされてしまったシーンを加えたUNRATED版というものがあるのだが、劇場公開版とこのUNRATED版を見比べていると、なんとなくおぼろげながらその疑問に対する答えが見えてくる。
作品内の一番コアな箇所で、最もゴア表現のきつい場面があり、その部分には、劇場公開版ではカットされている数秒程度のわずかなシーンがあって、それはほんの些細な役者の動作を映した部分なのだが、明らかに「人間」を「モノ」のように扱っている動作が描写されていて、「ああ、ここまでやってしまうと完全にアウトなのか!」ということに気付かされる。
そこには、人間に生まれつき備わっている理性だとか、モラルだとか、そういったもののボーダーラインが明確に浮かび上がっていて、普段は意識せずに埋もれてしまっているそれらのものが、一挙にあらわになる瞬間に、僕はカタルシスを感じているのだった。

 

 

冒頭に挙げた作品は、一見、過激で残酷なだけの映画だと評されてしまっているきらいがあるが、僕的にはそうではなくて、もっと深い、人間の抱えている基本的な条件みたいなものを、いちばんわかりやすいかたちで描写しているような気がするのだ。

だからこそ、目をそらすことができない。
誰もが目を背けてしまう場面であっても、僕はひたすら凝視しつづける。

 

 

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