坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

SF短編小説のアイデアを考える

最近、僕が通っている小説教室で出された課題で『「ペット」をテーマにしたSF短編のアイデアを3つ考えてくる』というものがあった。

「ペット」「SF」ときたら、もうそこから先はロボットみたいなものが登場して主人公とからんでいってどうたらこうたらと、なんだか割とありがちなものになりそうな気がするが、僕は最近興味を持っているVRとかARとか、そちら方面の技術の進化とからめて、いくつか話のアイデアを考えてみた。

まず、「ARペット」というガジェットを最初に定義して、それにまつわるデバイスが普及した未来を舞台にしてストーリーをひねり出そうという作戦だ。授業でも習ったけど、こういう「ガジェット」を一つ考えて、そこから話をいくつも産み出そうとするのは、アイデアを量産する手法として有効らしい。

 

 まず、「ARペット」とは、以下のようなものだ。

 

「ARペット」というガジェット


近未来の話。「ARペット」というサービスが、とあるIT企業から提供されている。
犬や猫などの動物に特殊な首輪型デバイスを取り付けると、その首輪に内蔵された小型のカメラやマイクなどの各種センサーが、その動物の動きや鳴き声などの活動状況データを365日24時間に渡って収集し続ける。
そうしてその動物が自然に生活している様子のデータがある程度蓄積されると、そこから機械学習を通じて、その動物のAIを生成することがでる。
さらに、生成されたAIを使って、拡張現実(AR)で、その動物の姿や様子を再現することができる。
再現された動物はARペットと呼ばれ、人間がARゴーグルとARグローブを使うことで、自宅で一緒に生活したり、外へ散歩に出かけたりすることができる。
ARペットのデータはユーザー間で売買することができる。例えば、ある人が育てた犬のデータを、別の人が購入して、そこからARペットを生成して拡張現実で飼うことができる。
また、複数のARペット同士を拡張現実でお互いに触れ合わせることも可能。

 


そして、このガジェットをベースにして考えた、SF短編のアイデアが、以下のようなものだ。


①ここ掘れワンワン


主人公は20代の独身男性。
以前からなにかペットを飼ってみたいと思っていたが、世話が大変そうで二の足を踏んでいたところ、ARペットサービスの存在を知り、試してみようと思う。
適当なARペットの犬のデータを購入し、自宅で飼い始める。
ARペットの犬はとてもよくできていて、実際に犬を飼っているのとほぼ遜色のない生活が始まる。
ある時、ARペットの犬を外で散歩させていると、少し犬の様子がおかしいことに気づく。
犬は公園のとある場所へと主人公を導き、そこでしきりと地面を掘る仕草をする。だが、ARペットなので現実世界に干渉することはできない。
ここに何かが埋まっているというのだろうか?
主人公が恐る恐る、その場所を彫り始めると…


②ペットロス


主人公は60代の男性。子どもたちは既に自立しており、妻に先立たれた為、一人暮らしをしている。
先日、大事に飼っていた猫が老衰で亡くなった。だが猫が元気だった頃から、ARペットデータ取得用の首輪をつけていたので、そこからARペットを生成して、ARの世界で引き続き猫を飼い続けている。
おかげでペットロスの苦しみはかなり軽減されていた。最近では、一日を通じてほとんどの時間をARゴーグルをつけて過ごすことが多い。
だが、ある時、ARペットの猫が突然いなくなってしまった。自宅の中や近所のどこを探してもいない。
ARペットサービスを提供しているIT企業に問い合わせるも、もともとそんな猫のデータは当社では管理していないという返答が帰ってくる。
いったい猫はどこへ行ってしまったのだろうか?
二度も猫を失い、悲しみにくれている男性に、一通のメッセージが届く。
「おたくの大事な猫のデータを預かっている。返してほしければ、こちらの言うことに従うんだ…」


③飼育授業


主人公は小学生の男の子。
学校での授業の一環として、ARペットをクラスのみんなで飼うことになる。
最初はうさぎやハムスターなどの世話をしていたが、ある時いたずら好きの友達が、そこへトラやライオンなどの凶暴な動物を乱入させてしまう。
だが、意外にも動物たちはARの世界で喧嘩を始めることなく、うまく共存してくれた。
それから友達のいたずらは徐々にエスカレートしていって…

 

 

とまあ、こんな感じなのだが、どの話も起承転結の「承」あたりまでしか考えていないので、この後どういうどんでん返し的な要素があったり、どういう結末を迎えるのかまではまだ思いついていない。

「①ここ掘れワンワン」では、この後に主人公が地面を掘ると、金目のものや死体なんかが出てきてビックリ!となって、そこから謎解きフェーズに突入して、このARペットの元になったオリジナルの犬とその飼い主にまつわる泣けるエピソードみたいなものが徐々に明らかになっていくという、そういう展開にしていくのが王道なのかなと思う。

「②ペットロス」は、この後で猫のデータを盗んだハッカー集団との対決みたいな感じにもっていくことになるのかな。ただのデータに対して、そこまで気持ちを入れ込んでしまう人間の滑稽さや、逆にペットとの絆や、別れにまつわる悲しみなんかを描き出していくといいんじゃないだろうか。

「③飼育授業」は、昔からよくある動物パニックものの展開になりそうな感じがするが、そうはならずに意外な結末に着地させる方がよいと思う。

 

これらのアイデアについて、小説教室の先生から講評をいただいたが、どれもアイデアのとっかかりとしてはこのままで面白いので、この後の展開のさせ方によってはとても面白い作品になるだろうとおっしゃっていて、やる気が出てきた。

個人的に一番書いてみたいのは「②ペットロス」なので、これを実際に短編小説のボリュームまで仕上げてみたいと思う。