坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

小説の学校に通う

僕は普段、自宅で時間のある時にはたいてい、映画を観たり、漫画や小説を読んだりして過ごしている。これは若い頃からずっとそうで、とにかく他の誰かが作った「物語的なもの」に触れている時間が大好きなのだ。常にそういった他人の創作物を消費することで、今まで生きながらえてきたと言ってもよいだろう。
そうしてある時から、そういった創作物を消費するだけではなく、自分でも創造することができたりしないものだろうかという思いが自分の中に溜まってきた。なんだろう、創作物を創造することができる人たちに対する憧れのような感情だろうか。自分も少しでも彼らに近づきたい、そういう気持ちが心の中心に常に居座るようになっていた。
映画や漫画を制作するのは無理でも、小説だったら文章だけの世界なので、自分にもトライできる余地があるのではないかとずっと思っていて、それでもなかなか創作の為のアイデアが空から降ってきたりすることはなく、何も書き始めることのないまま、今に至っている。

 

そうこうしている内に僕も、もう40歳も半ばになりつつあって、ちょっとここらで本気を出しておかないとまずいかな?という気持ちになってきている。やりたいことがあるのなら、無理くりにでも今の内にやっておかないと、体力や思考力はこれからどんどん低下していくだろうし、このまま何もしないまま寿命が尽きてしまうことがなにより恐ろしいと思う。
そこで、小説の書き方を指導してくれるような一般人向けの講座みたいなものがあれば、受講してみたいと常々思っていたのだが、このあいだぼんやりと新聞を眺めていたところ、そういう作家養成を目的にした専門学校の広告が出ているのが目についた。そこで説明会をやっているというので、先週末に実際に行って話を聞いてきた。

 

僕が書きたいのはエンターテイメント小説なのだが、その学校では「ジャンル小説講座」というのを開講していて、その講座の担当講師の方が説明会で話をするのを聞いてきた。これが、なかなか面白かったのだ。
ジャンル小説」の「ジャンル」とは、ミステリやSFやホラーや時代小説やらといろいろあるのだが、この講座では、各ジャンルの定型的な手法についてまず学ぶらしい。
ミステリだったら、まず物語の冒頭で「謎」が提示されて、その「謎」をああでもないこうでもないと主人公が解き明かしていくという、その流れの作り方について勉強しましょうということらしい。
他にも、小説を書く上での細かな要素について、その調べ方を教えますと言っていた。これはどういうことかというと、例えば小説の中で、警察を舞台にした場面を描こうとしたときに、警察組織の内部がどうなっているのかがわかっていないと細かい描写ができなくなってしまい、物語に説得力がなくなってしまうので、そういう具体的な情報を普段プロの作家はどこから仕入れたりしているのかについて、教えてくれるそうだ。

 

そういう小説を書く上でのテクニック的なことをまずは半年間かけて勉強した後で、残りの半年間で実際に自分で50枚の短編を書いてみるという、いわば実習のようなことをやっていくそうだ。これは、公募などでの新人賞に応募できる最低枚数が50枚からだそうで、そのレベルにまで到達することを講座の最終的な目標においているらしい。
なので、ここから先は、実際に小説を書く上でのアイデアの出し方や、プロットの立て方について勉強していって、最終的に50枚の成果物につなげていくという。
イデアについては、受講生は当然みんな素人なので、そんなに面白いものが飛び出してくるわけではなく、講師も最初はそれで全然構わないと言っていた。むしろ重要なのはプロットの方で、ここで最初の場面から最後の場面にいたるまで、どういうふうに物語が進行してどういう終わり方を迎えるのかまでをきっちりと設定しておいてもらうと言っていた。そうすることで、小説を書いている途中で嫌になって投げ出すことをできるだけ防ぐことができるという。


最後に講師の方が、小説家って、別にそんなにすごいことをやっているわけではなくて、普通に会社員が会社で仕事しているのとあまり違いはないので、誰にでもできることだと言っていたのが印象的だった。小説を書くということを特別なこととして捉える必要はなく、一つ一つの細かな作業を丁寧に組み立てて、全体として一つの作品として完成させるという、仕事的なものとして考えて気軽に取り組んでみて欲しいということなのだろう。

 

授業料も決して安くはないし、一年間という貴重な時間資源も投入することになるが、死ぬまでに1本だけでいいから自分の小説を書いてみたいというかねてからの僕の思いを達成するべく、思い切って来週からこの学校に通ってみることにした。
講座形式なので、たぶん一緒に受講する人もたくさんいると思うので、そういう人たちと一緒になって小説を書くという体験は、一人で書いているよりもずっと面白そうな感じがする。来週から楽しみだ。