坂本から君へ

さかもとのブログ。自分語りとか世間話とか。大阪にいる。

インターネットと死体と酒鬼薔薇

インターネットが一般家庭で自由に使われ始めた頃、僕も興味が湧いたので、自宅の電話回線を使ってネット接続をしてみることにした。

ネットに繋ぎはじめた最初のうちは、そこで何をやっていいのか全くわからなかったので、ヤフーのトップページから検索して辿り着いた個人ホームページなんかを見て満足していた。
やがてだんだんそれが物足りなくなってきて、いわゆるアングラ的なものを好んでよく見るようになっていった。
主に海外サイトが多かったが、爆弾の作り方が解説されたサイトや、死体写真が掲載されているサイトなんかを中心に、よく巡回していた記憶がある。

 

 

やがて、自分でも何かホームページ的なものを作って公開してみたくなってきて、見よう見まねでHTMLをいじりながら作ってみた。
当時は、自分の日常を日記という形式で公開する人が多かった。今でいうブログやSNSと同じ感覚だろう。
僕の場合は、ただ単に自分の私生活を公開するだけでは面白くないなーと思ったので、全くの創作で日記を書いてみることにした。それと海外サイトから拾ってきた死体写真を組み合わせて、「変態日記」と題して公開してみたのだ。
具体的にどういう日記かというと、「きょう、みちばたをさんぽしていると、おじさんがたおれているのをもくげきしました。」という子供が書いたような文の「おじさんがたおれている」の箇所にリンクを貼っておいて、そのリンク先に男性の死体写真を置いておくという、ちょっとドッキリ的な仕掛けを施しておいたのだ。「子供が書いた日記」という、のほほーんとした雰囲気と、死体写真のグロテスクさのギャップで笑いを取ろうとしていたんだと思う。 いわゆる「ブラックなお笑い系のサイト」を目指していたわけだ。
これは、その手のブラックユーモアを理解できる層にかなりウケがよくて、「いつも更新楽しみにしてます!」とか、「頭おかしいですねあなた」とか、そういったファンレター的なものをメールでもらったりすることが増えてきてだんだん楽しくなってきた。

 

 

そんなことをやっていた時に、あの事件が起こった。
小学生の児童が殺害され、その死体の一部が学校の校門に置かれるという、常軌を逸した陰惨な事件に、世間は衝撃を受けた。
そして僕はというと、早速この事件をネタにしたコンテンツを作成してホームページにアップしたのだ。
「きょうは、がっこうで『なんきんだいぎゃくさつ』についてべんきょうしました。」「ぼくぐらいの年のこどもが、たくさんころされていました。」「とうじは首をきりおとすのがはやっていたようです。」という文章と共に、南京大虐殺の時の死体写真をネットから拾い集めてきて大量にアップした。
僕としては、子供を殺してその首を切り落とすという、非常に残虐な行為が、戦争という時代背景を持つことで正当化されるという、歴史の矛盾を指摘したかったのだ。
今世間が大騒ぎしているようなことも、時代によってずいぶん受けとめられ方が異なってしまうというところを突いて、うまく笑いにつなげていけるのではないかという、僕なりの計算がそこにはあった。

 

 

けれどもこれを公開した翌日に、早速プロバイダから苦情のメールがきた。曰く、「あなたのやっていることは公序良俗に反しており、社内外から批判が殺到しているので、このコンテンツは削除してほしい」と。「もし削除しない場合はホームページの利用自体を停止しますよ」と。
仕方がないのでそのコンテンツは削除した。なんか世の中って面白くないなーと感じながら。表現の自由?なにそれうまいの?
けれども、このことをきっかけにして注目を浴びた僕は、ネット上の知り合いが一気に増えることになった。そしてそこから、世間一般の人々には理解されにくい僕なりの「笑いのセンス」を理解してくれる仲間の存在を感じて、安堵したのを憶えている。
その後も、神戸の事件とからんで、新聞記者だと名のる人物から僕に対して取材の申し込みが来たり、加害者の顔写真がWebやメールで出回ったりと、インターネットの持つすさまじい影響力の片鱗を感じ始めたのもこの頃からだった。

 

 

あれから随分と経ったいま、神戸の事件の加害者が手記を出版したり、Webサイトを公開したりということが起こったり、それに対する世間からの批判もあったりしたことを思い出し、そこにぼんやりと昔の自分の姿を重ねてしまった。
表現の自由?なにそれうまいの?

 

 

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